久しぶりの銀座

今日は久しぶりに銀座に行きました。特に買いたいものがあるわけでもないのにどうして銀座に行ったかというと、中国人観光客が消えてしまった銀座の街を久しぶりに見たいと思ったからです。ここ数年の団体旅行で来る中国人客は本当に銀座の通りという通りを埋め尽くしていて、どこを歩いてもやや訛りの強い中国語が聞こえてくるものでした。果たしてここは本当に日本なのだろうか、もしかしたらとっくにこの街は中国に占拠されているのではないか、とまで思ってほっぺたをつねってみたくなるくらい、私にとってはちょっと異常な状況でした。思えば、おもてなしか何だか分かりませんが、オリンピックが決まった頃から不思議な観光客目当ての幟やらサービスが銀座の街に少しずつ浸透するようになったと思います。
それでも最初はちょっと遠慮がちでした。元々から通っている日本人の常連さんはもちろん大切にするわけですから、商品棚の隅っこにおまけみたいに英語や中国語の商品説明が並んでいるだけだったと思います。それが数年前くらいから大々的に外国人観光客をターゲットにした商売が増えてきて、最近ではあまり悪目立ちしなくなりましたが、銀座で爆買いした商品を持って帰るためのスーツケース屋さん(それも中国製のスーツケース)が中央通りの良い場所に店を構え、本当に飛ぶように売れてしまうといった狂想曲が毎日のように繰り広げられたものです。その当時私は銀座にある会社で仕事をしていたものですから、「まあなんという下品な買い方をするのだろう」と眉をひそめながら、彼らの乱暴な歩き方に気を付けながら道の端を避けるように歩いたものでした。
さて、コロナウィルスです。この騒ぎはまだどういう終息を迎えるのか全く見通しがつきませんが、あれほど猛威を振るった団体客たちが今度は日本に来ること自体出来なくなってしまいました。あれだけチャイナマネーに支えられていた銀座の街は、今度はどんな顔をしてこの危機を乗り越えようとしているのだろう。そう思うと、早く街の状況を知りたくなって、今日ようやく行く事が出来たわけです。一言でいうと、やはり街は以前に比べれば閑散としていました。しかしよく観察すると、アジア系でない外国人も普通に歩いているし、通りを歩く人の大部分は日本人で、なんだか90年代の銀座に戻ったかのようでひとりでにワクワクしてきてしまったのです。「ああそうだよ、昔はこういう感じだったよね」と独りごちながら、横一列で歩道をふさいでも何とも思わない人々がいなくなった中央通りを楽しく歩きました。今朝は少し雨が降りましたが、お昼前から天気が良くなり気温も上がったのでとても気持ちが良い小春日和の天気だったのです。ただどうしても花粉は飛び始めているので、花粉症である私はマスクを外すことが出来ず、時折クシャミをしながら楽しく店先を拾い歩くことが出来たのです。お昼は馴染みの焼き鳥屋さんに行く事にしました。店員さんも顔を覚えていてくれて、懐かしい気分で実に美味しく焼き鳥定食を食べました。これだけきちんとした味付けのものが1000円台前半で食べられるというのは本当に大変なことだと思います。決して銀座のテナント料は安くはないので、あるいは他の店舗や事業で儲けているからとんとんなのかも知れませんが、下手な都市で中途半端なごはんを食べるよりもやはり銀座でお手頃ランチを食べた方が幸せなことに思えます。久しぶりにここにこれて良かったと思いました。食後は、これまた昔いつも通っていた純喫茶に向かいました。銀座のコーヒー屋は店によっては常連客用にコーヒーチケットというものを売っていて、これを事前に回数券のように購入して、来店するたびに一枚ずつ切っていくので毎回会計をすることなく、常連として店に文字通り通うことが出来るのです。私も職場こそここではなくなりましたが、週末など休みの日には時々銀座に来ることもあるので、以前のチケットはまだそのままキープしておいてもらっています。そして店員さんたちに一通り挨拶して、モカマタリを注文して優雅な昼下がりを過ごすことが出来ました。
 そして高級店をいくつか見て回ると、やはり買っていってくれる人々がいないものだから店員さんも皆暇そうです。本来なら今でも旧正月の余韻が残っていて、多くの人が毎年大量にお買い物をしていってくれていたわけですから、このような状況になって果たして大丈夫なのか、他人事ながら心配になってきます。
それにしても、街を歩く人の層が少しずつ変わっていくのもこの銀座の街の良さではありますが、まるでエアポケットのように、観光客が多すぎない現在の状況が発生したというのは、お隣の大国にとっては大変な事態かとは思いますが、私個人にとってはちょっとしたご褒美のような、と言っては語弊があるかもしれないけれども、懐かしい昔の街の空気を吸えたようなそんな一時だったように思います。

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